いつも空は、曇りときどき晴れ

自分史、人生曇り空ばかりだけど、ときどき晴れがちょうどいい時もある

潔さに惹かれ…28年今つづく平仮名の葉書

クラスメイトから藤本係に任命された私は、

いつも藤本さんと一緒に行動するようになった。

藤本さんの机と椅子運びを毎日やるようになった。

藤本さんの持ち物管理。

藤本さんの学習管理。

あとは、藤本さんと一緒に遊ぶこと。

 

任命されたからやっているわけではない。

自分が望んでやっていた。

理由は簡単だ。

藤本さんが好きだからだ。

 

夏のプール開き。

教室で皆んなが水着を着替えていたときだった。

女子らが叫び声を出した。

きゃーきゃーきゃー

大騒ぎして男子らも集まる。

 

「藤本、気持ち悪りぃ、なんじゃこれは〜」

 

私は慌てて藤本さんの近くに寄る。

見てみると、藤本さんの下半身が赤紫色と青紫色に染まっていた。

正直、当時の私も驚いたのを覚えている。

どす黒くさえ見えた…

藤本さんがスカートを履かず、いつも長ズボンを履いてる理由が分かった。

 

藤本さんは気にせず身支度を整えていた。

いつものことか…そんな感じで。

 

消毒を終えたらプールサイドに体育座りをして担任を待つ。

私も消毒を終えプールサイドへ行く。

プールサイドには藤本さんが体育座りをしていて、藤本さんの周囲には誰も座っていない。

3m周囲は空いていた。

皆んなは藤本さんを避けていた。

私は、藤本さんの隣で体育座りをした。

藤本さんにさりげなく聞く。

「これは、怪我したの?」

藤本さんはうつむきながら答えていた。

「アヤコが生まれた時から、こうなってた。」

 

生まれつき…女の子なのになぁ…

私もうつむき何も言い返せなかった。

 

「アヤコ、気にしてないよ、だって痛くないもん、歩けるしね、平気だよ、皆んなは嫌がるけど。」

 

藤本さんは、うつむいていた顔をしっかり上げて、そう言ったんだ。

 

私は当時、そんな藤本さんを見て、彼女の魅力に触れた気がしたんだ。

 

プールに入る合図が鳴った。

私と藤本さんは一緒にプールに入った。

その時だった。

誰かがまた藤本さんを責めた。

 

「藤本が入ったぞぉ〜このプールはばい菌でいっぱいだぞ〜。」

誰だろう…そんな言葉を発しているクラスメイトがいたんだ。

 

男子の学級委員がさらに言う。

「プールは伝染病を拡大する原因になります!」

 

きゃーきゃーきゃー

藤本さんが女子らの集団に近寄ると、叫び声をあげて逃げ出す始末。

クラスの皆んながプールからプールサイドへ逃げ出した。

 

私は、皆んなの反応を見て、さらに女担任の反応を見て、ひどく怒りを覚えた。

特に、女担任には幻滅したのを覚えている。

 

なぜ、注意しないの…

 

私が恐る恐る女担任の方へ近づこうとすると、藤本さんが私を止めた。

 

「じゅんかちゃん、いいの、アヤコ、慣れてるから、気にしてないよ、アヤコがプールを出ればいいの。」

 

そう言って藤本さんは、プールサイドに上がった。

消毒室へ1人向かう。

 

その後、クラスメイトは全員プールに入り出し、女担任による授業が始まった。

 

私は、藤本さんを追いかけた。

悔しくて、悔しくて、たまらなかった。

 

教室に着替えを済ませた藤本さんがいた。

藤本さんが教室で泣いていた。

私は、泣いている藤本さんを見てるしかなかった。

なんて声をかけたらいいのか分からなかったから。

 

私は図書室に行って、藤本さんの下半身の色について調べようとしたけど、調べ方が下手なため、分からなかった。

 

保健室に行った。

保健の先生なら知っているかもしれない。

女性の保健先生が優しく教えてくれた。

 

広範囲にわたる色素沈着と太田母斑。

 

当時の私にはよく分からなかった。

ただ、言えることは、ばい菌なんていない、伝染病を広げるものではないということだった。

汚くなんてない、汚くなんてない!

皆んなは藤本さんよりよっぽどバカだ。

人の言うことを鵜呑みにしちゃって!!

 

教室に戻ると藤本さんが笑顔で私を呼んだ。

藤本さんの顔を見て、ほっとした。

「じゅんかちゃん、今日アヤコの家に来て。」

 

私は笑って言った。

「藤本さんの料理が食べたい…」

 

私は、藤本さんが好きだ。

だから、友達になりたいと思っていたんだ。

彼女が、知的障害だから?

絶対に違う。

彼女が、いじめられて同情したから?

絶対に違う。

PTA会長の息子が、私を藤本係に任命したから?

絶対に違う。

 

彼女にはたくさんの魅力があったんだ。

彼女は、情に厚く、思いやりがある。

彼女は、責任感があり、家族を守っている。

彼女は、他者の悪口を言わない。

彼女は、自分の障害を絶対に人のせいにしない。

 

障害者は、健常者を妬み、誰かのせいにすることで自分を守っていく傾向がある。

 

でも、藤本アヤコさんという子は、絶対に人のせいにしない。

泣き虫だけど、泣きながらも、持ってる能力を最大限に出して一生懸命に生きようとしている。

 

私は、そんな藤本さんを見て…

「潔い…」

当時の小学5年の私が、感じたことだ。

 

きゃーきゃー言って、ばい菌扱いして逃げ回る女子と、まったく友達になりたいとは思わなかったんだ。

きゃーきゃー言う女子らより、

よっぽど藤本さんの方が魅力で惹かれる。

 

彼女の潔い生きかたが好きだ。

人のせいにしない。

私は、彼女からそれを教えてもらったんだ。