いつも空は、曇りときどき晴れ

自分史、人生曇り空ばかりだけど、ときどき晴れがちょうどいい時もある

高校ライバルは、私の精神的支柱だ!

イシドリ君は卓球で県大会準優勝をとる。

私は、県のコンクールで金賞をとる。

 

イシドリ君と私は、けして能力のある生徒ではなかった。

寺坂くんや保科くんのような、ずば抜けた思考を持つ生徒でもない。

高校の同級生らは言う。

「頭がいいね、運動神経もよくて、絵の才能があるよね、すごい、すごい!」

偏差値45の公立高校の生徒は、誤解をしていたんだ。

私とイシドリ君は、頭がいいんじゃなくて、運動神経がいいんじゃなくて、絵の才能があるわけじゃなくて…

 

ただ、必死にやっているだけなんだ。

続けているだけなんだ。

 

だから、この高校にいる全校生徒が必死になれば、ある程度のところへ皆んな行けるんだ。

この高校の生徒の口癖。

毎日、聞いてた、毎日、聞いてた。

気になって仕方がない。

 

「分かんねーできねーできっこない。」

 

だから、皆んな無能な自分だと勘違いしてしまうんだ。

無能なんかじゃないんだ。

私も無能だと感じてる。

だからこそ、そうではないと…自分で自覚したかった。

できないんじゃなくて…

ただ、やらないだけだよ…

やれば、誰だってある程度のところへ行けるんだ。

無能な私の考えだ。

高校の同級生に伝えたかったこと。

 

 

夏休み前。

いつものように学校の図書館で、イシドリ君と一緒に勉強していた。

イシドリ君が集中して解いている問題を見た。

 

私が持っている教材内容に比べ、良質な問題がたくさんあった。

市販で売られている参考書と問題集は、月1で購入していた。

月の小遣いが1500円。

周囲の同級生に比べて少ない額だと分かる。

でも、月に1冊の参考書か問題集が買える。

1ヶ月で1冊の問題集…足りなかった。

高校教師に古い問題集をいただき、勉強していた。

 

中学の勉強とは…全然違う。

高校レベルの勉強は…自力でやるにしては限界があると、ひしひしと感じていた。

そして、私は、怖かった。

進学校でどんどん進んだ授業を受けている生徒たちがいること。

塾や予備校で、たくさん情報交換して、たくさん良質な問題を解き、切磋琢磨するのだ。

脅威に感じる。

 

無理だと感じるようになった。

私の能力で、どんなに足掻いても、太刀打ちできない相手だと思うようになった。

私の家庭で、学費を出してもらうことは絶対にできなかった。

両親が渋っているわけではない。

私が、自分で自分を許せないんだ。

お金を誰かに出してもらう罪悪感。

自分でなんとかしたかったんだ。

 

金銭的な問題と実力不足。

 

100%無理だと思った。

同級生には、できるできないじゃなく、やるかやらないかの話だよって言ったくせに…

どんなにやっても、届かないところがある。

 

助産師を諦めよう…

 

 

図書館の机の上で、集中力が散漫して考えていた。

そんな様子に気づいたイシドリ君は声をかける。

「どうしたの? 最近、浮かない顔をしてるよ。」

 

私は、イシドリ君をじっと見る。

イシドリ君を見てると、なんか、辛い気持ちが少し楽になるんだ。

あぁ…誰にも相談できないや。。

これは、私の問題で、私がなんとかすればいい話なんだから…

 

「スゲノさん、気を悪くさせたら、ごめん、あのさ、僕、東京の◯◯予備校に通っているんだよ、

予備校の今までのテキスト全部、貸してあげるよ。」

 

どこからか、空からか、天使の恵みが落ちてきた。

天使は…どうやら、イシドリ君だった。

 

図書館の机の上で私は、込み上げる思いを必死に抑えようとしていた。

本音は…辛くて辛くて。

本音は…逃げたくて逃げたくて。

本音は…勉強なんか、やめたくて。

本音は…選択肢の幅が広がって、楽に選べて。

本音は…皆んなみたいに、お金の心配をしないで、どこの大学にでも行きたかった。

 

抑えていた感情がこみあがり、歯をくいしばった。

目の前にイシドリ君がいる。

人前で泣きたくはない。

でも、イシドリ君は…違う。

同志だから…

通じるものがあったから。

お互いの苦労を認め合っていたから。

だから、自然とイシドリ君に涙を見せることができたんだ。

涙が頬をつたる。

目を真っ赤にして、たくさん涙を流した。

私が落ち着くまで、

イシドリ君は私を優しく見守ってくれた。

 

涙を流しながら笑顔でイシドリ君に言った。

「イシドリ君…ありがとう、貸してくれると嬉しい…嬉しい…すごく、すごく助かる、助かる、助かるんだ…ありがと。」

 

イシドリ君もにこっとする。

大したことじゃないよって。

大げさだよって。

笑顔で言ってくれた。

 

私とイシドリ君は日曜日に市立図書館へ行った。

コンビニのコピーは1枚10円する。

市立図書館のコピーは1枚5円で安かったからだ。

イシドリ君は莫大なテキストを持ってきてくれて、一緒にコピーを手伝ってくれた。

かなり時間がかかったのを覚えてる。

それなのにイシドリ君は嫌な顔をせず、手伝ってくれたのだ。

 

たった1人で意地をはって、

たった1人で無理をして、

たった1人で我慢して、

たった1人で不安と焦りを感じて、

 

辛くて、さびしくて、泣きたくて、弱音をはきたかったんだ。

 

でも、ライバルが現われた。

ライバルのイシドリ君は、だんだん関わるたびに、

私にとって大切な存在になっていたんだ。

気づかなかった。

いつもいつも、側にいて、ピンチの私を助けてくれる。

イシドリ君は、私の精神的支柱になった。

彼がいたから私はがんばり続けることができたんだ。

 

願いが叶うなら、

イシドリ君に会いたいです。

伝えれなかったことを口から伝えたかったです。

空にいる君は、どんな景色を見てますか?