いつも空は、曇りときどき晴れ

自分史、人生曇り空ばかりだけど、ときどき晴れがちょうどいい時もある

高校ライバルの触発は大きい

ある下校時間。

自転車通学をしていた私は、校舎裏にある駐輪場に向かった。

自分の自転車を出して、大通りに自転車を出す。

 

「スゲノさん、今帰り?」

 

目の前に同じクラスのイシドリ君がいた。

私はうなずき、自転車に乗って走行した。

後ろからイシドリ君がついてくる。

まだまだ…ついてくる。

なんだろう…

どこまでついてくるんだろう!

 

私の自宅前。

イシドリ君がいる。

「イシドリ君の家は、近くなの?」

私は、イシドリ君に質問をする。

彼はきっと、偵察しに来たに違いない。

うちが貧乏かどうかを…

 

「これが、スゲノさんの家だね、覚えたよ、じゃあ、帰るね、また明日!」

 

私の家をマークされてしまった…

ライバルの作戦か!

イシドリ君はニコニコしてバイバイをする。

帰って行った…

イシドリ君も私をライバル視しているんだ。

がんばらないと。

 

 

テスト返却期間は、毎回ドキドキだった。

クラスで点数の高い人順で名前が呼ばれるからだ。

誰が一番に呼ばれるか、緊張していた。

私の名前かイシドリ君の名前か…

イシドリ君に負けたくない。

数学のテスト返却。

「スゲノ、100点。」

「イシドリ、96点。」

 

やった、やった、数学は勝った…

 

歴史のテスト返却。

「イシドリ、100点。」

「スゲノ、94点。」

 

イシドリ君は社会強し!

 

生物のテスト返却。

「スゲノ、100点。」

「イシドリ、90点。」

 

生物は絶対負けないよ。

 

 

英語のテスト返却。

「スゲノ、92点。」

「イシドリ、92点。」

 

同点だ…

まだまだ、勉強が足りん…

 

私とイシドリ君の名前が上がるたびに、クラス中がざわめく。

2人はライバルだと認識していたようだ。

 

 

部活の後、図書館へ行く。

今日は、シダ植物先生とおじいちゃん先生が来てくれることになっている。

図書館で1人勉強していると、誰かが入ってきた。

あれ…先生かな。

足音が私の方へ近づいてくる。

軽い足音で…

目の前には、イシドリ君が立っている。

 

あっ、まただ…もしかして…

 

「今日から僕も部活の後、図書館で勉強しようと思って、よろしく。」

 

やはり…先生方が来ることを察知していたのかぁ〜

なるほど、手強そうなライバルだ。

 

「イシドリ君、今日2人の先生が来て勉強を教えてくれるよ。」

 

イシドリ君は私の前の席に座った。

お互い向き合いながら勉強する。

疲れて休みたくなる衝動にかられる。

でも、目の前には強敵ライバルが必死に勉強している。

そんな姿を見たら…休んでいられなくなる。

イシドリ君も同じく私を見て、勉強する気力を維持しているに違いない。

図書館でたった2人で静かに勉強する光景…

なんだか自然な雰囲気だった。

心地よかった。

心強かった。

心強かった。

もう、1人じゃないかも…

仲間が1人増えた。

 

 

土曜日は、長時間勉強することになる。

昼食後の勉強は、睡魔が襲って来て、辛くなる。

こっくり、こっくり…

 

「スゲノさん、眠そうだね、大丈夫?」

 

イシドリ君が声をかける。

私は必死に答える。

「すごく、眠い…でも、勉強しなきゃ、勉強しなきゃ…勉強しなきゃ…」

 

イシドリ君は、私にアドバイスをする。

「スゲノさん、10分ぐっすり眠って…ちゃんと僕がスゲノさんを起こすから、大丈夫だから、ね、ね、安心して…」

 

私は、イシドリ君の言う通りにした。

非常に眠かったんだ。

昨夜は3時間睡眠。

自己流で勉強しているから、効率の悪い勉強をしていたんだ。

眠くて眠くて、頭が重くて、めまいがして、辛かったんだ。

10分間、私は図書館の机の上で熟睡していた。

あの10分間は、24時間に感じられるほど、私は爆睡していたんだ。

 

「スゲノさん、スゲノさん、起きて、起きて、時間だよ、時間…勉強するんだろ?」

 

イシドリ君の声で目が覚めた。

 

起きてみると、不思議だ。

重かった頭が軽くなっているのだ。

めまいが消えた。

頭の思考回路が生き返ったようだ。

 

「すごい…頭がさえてる…気分いい…」

 

イシドリ君は満面の笑みで私を見た。

「長時間勉強する時は、10分でも休むと、後の作業が効率よく進むよ、よかった、生き返ったみたいで笑」

 

私は、以来、3時間以上の勉強時間や疲れた時は、10分睡眠を取り入れるようになった。

 

学校の図書館では、イシドリ君と私が交互に10分休憩を取るようにした。

イシドリ君を10分間寝かせ、起こしてあげるのだ。

私が爆睡しているところを、無理に起こすのが申し訳ないような気がすると、イシドリ君は言っていた。

寝かせ起こし合う仲間…ライバルはなかなかいいものだと思った。

 

 

数学の授業が終わるチャイムが鳴る。

私とイシドリ君は、チャイムが鳴る前からうずうずしている。

 

キーンコーンカーンコーン…

 

私とイシドリ君は起立して、教室から飛び出す。

これが私らの習慣のようなものになってしまった。

廊下を走ってしまう2人。

イシドリ君の方が断然足が速い。

私は、いつも負けてしまうのだ。

職員室に入り、一番はシダ植物先生だ。

イシドリ君に先をこされる。

イシドリ君はシダ植物先生にたくさん質問をする。

私は、ちょっとイライラしながら待っていた。

あぁ、先をこされたなぁ〜

 先生の取り合いも…ライバルだな…

休み時間の職員室駆け込み習慣、大学受験まで続いた。

 

 

内申点は勉強がすべてだと勘違いしていた。

テストの成績以外にも、内申点に加点する項目があると、後々になって知る。

 

ある朝礼会の日。

全校生徒の前で名前が呼ばれる。

「イシドリ◯◯!前へ。」

 

なに?

イシドリ君が校長先生の前に行く理由なんて、あるの?

 

「イシドリ◯◯、卓球県大会において準優勝をおさめたので、ここに表彰する。」

 

全校生徒が拍手喝采をする。

 

イシドリ君が部活で活躍したという事実。

彼は、あれだけの勉強をしておきながら、部活でも手抜きをしなかったのか…

 

負けている…

私は、勉強のことしか頭になかった。

 

校舎の壁に大きなたれ幕がふいていた。

卓球部イシドリ◯◯、県大会準優勝おめでとう!

 

たれ幕を呆然として見ていた。

いかん…いかん…いかん…

負けておれんな!

 

私は、走って美術室へ駆け込んだ。

息を切らして、急にスイッチが入ったかのように。

「原先生、原先生!」

 

原先生は美術大学卒業したての新米教師。

26歳。

学校の女子生徒に人気があった。

 

「おぉ、スゲノ、どうした?」

 

高校の美術部員は28人で、まともに絵を描いている生徒は私と古口さんだけだ。

あとは…あとは…

漫研化している。

 

「原先生、県のコンクールに出品します…大作でいきたいです!」

 

原先生は驚いていた。

「スゲノさんがコンクール? 珍しいですね、コンクールに興味がなかったでしょう?  どうしたんですか…」

 

「原先生、今回は自画像で、等身大の自分を描きたいんです、カンバスは自分で貼れますから。」

 

 

私は、無我夢中で自画像を描いたのを覚えている。

かなり集中して描いていた。

部員はどんどん先に帰って行く。

1人部活のはじまりだ。

広い広い部室で、

1人油画を描いていく。

陽が沈むと、部室がだんだん暗くなっていく。

電気は好きじゃない。

陽の光が好きなんだ。

陽の光があたる自分の顔を見るのがいいんだ。

ありのままの姿を描けるから。

人工の電光は…ありのままの自分を狂わす。

陽の光にこだわった。

人工電光の影は嫌いだ。

陽の光の影に、とことんこだわる。

そして、ありのままの自分の姿を描きたかった。

たくさんの顔をもつと自覚する。

私の絵画はいつも、いつも、暗いんだ。

無意識に暗くなる…

何だろうか、自分の本来の姿をうつしているのかもしれない。

 

等身大のカンバスに紐をとりつけ、背中に背負う。

自転車に乗って帰宅する。

カンバスが大きすぎて大変だった。

 

自宅でも筆を入れた。

出品期限までに間に合わないからだ。

勉強をしつつ、油画を描いた。

夜遅くまで油絵をおく。

兄がきて私の絵を見た。

「うわぁ〜じゅんかの絵、気持ち悪いなぁ〜普通の絵は描けないのかぁ?」

 

深夜、母と父が私の絵をみる。

母「まぁ…じゅんかの絵、暗いし、怖い感じだわ。」

父「じゅんか、もっと明るい絵の具を使ったらどうだ?」

 

わけが分からなくなる。

何だろうか、いい絵って。

どうやら私の絵画は、気持ち悪いみたいだ!

ダイシだけは、絶賛してくれたのにな…

大人の目からは、私の絵画は受け入れられないんだ!

 

どんなに筆を入れても…満足できなかった。

イメージしていた作品とは、程遠い。

油絵の具の材料の質か?

そんなもん、言い訳だ。

 

勉強と絵画の両立がどれほど大変かを思い知る。

イシドリ君は、両立していた。

勉強と卓球を。

私は、とっくにイシドリ君に負けていたんだ。

 

原先生が言う。

「スゲノさん、明日がコンクール作品を提出する期限です、仕上がりますか?」

 

自画像は、ぜんぜん完成していなかった。

筆を置くほど、完成からとおのくジレンマだ。

イライラしていた。

納得いく自画像を描けなかったことが悔しい。

悔しい、悔しい…

部室でたった1人、取り残された。

何なの、この高校は…

何なんだ!

中学の美術部は盛んだった。

この高校の美術部は、交流会の場か!

まともに絵を描いてる人はいない。

誰にも相談できないじゃないか…

 

 

部室で1人絵を描いていたところに、原先生がやってきた。

 

原先生は、まじまじと、私の絵画を見た。

 

「スゲノさんの自画像は、怒りを感じるねぇ、それと、悲しみを感じるねぇ、それから…必死にこらえようとしている、必死にね…でも…よく見ると、うっすらと泣いているよね…うっすらと…よ〜く見ると泣いているよね?」

 

さすが、原先生…私が表現する意図を感じとってくれた。

原先生、そうなんです。

これが、本来の姿です。

分かってくださったのですね…

ありがとうございます。

1人の人に気づいてもらえれば、私は満足です。

私の顔は、不思議でおかしいし、気味が悪いんですよ。

小さい頃からの姿なんですよ。

 

「はい、原先生のおっしゃる通りです…複雑な心境を全体で表現したかったんです…でも、うまくいかなくて…」

 

原先生はにっこりする。

「スゲノさん、いいんだよ、完成された作品だと思わない方が、伸びしろは広がるだろう?」

 

原先生の言葉に、私は元気づけられた。

先生、ありがとう。

ありがとう。

 

 

私は、自画像のテーマを「未完成」とつけた。

完成していないから、そのままの意味だ。

深い意味はなかった。

心の底から未完成だと思えたからだ。

だから、自画像なんていうテーマ名は、絶対避けたかった。

満足していないから未完成。

 

 

ある朝礼の日。

名前が呼ばれる。

「スゲノジュンカさん!スゲノジュンカさん!

前へ。」

 

私は胸をはって、全校生徒の前で前へ進む。

イシドリ君、見てるかな?

私だって、部活でがんばったよ。

勉強だけじゃないんだから!

負けないよ…イシドリ君。

 

「県大会コンクールにて、自画像の金賞を受賞したため、ここに表彰する!」

 

やったよ、やったよ。

 

内申点のことは、すっかり忘れていた。

ただ、イシドリ君ががんばっていたから、私もがんばってみたかっただけだ。

コンクールなどの賞にはまったく興味がなかった。

でも、イシドリ君のおかげで、私は意識するようになった。

勉強だけが、すべてじゃないよって言うイシドリ君の考えに、賛同したんだ。

 

イシドリ君から教わることは…たくさんあった。

なのに、当時の私は、自分のことしか考えていなかったんだ。

自分の進路ばかり考えていた。

 

けれど、イシドリ君の影響は大きかった。

今でも、イシドリ君に感謝しているんだよ。

お空にいるイシドリ君へ。