いつも空は、曇りときどき晴れ

自分史、人生曇り空ばかりだけど、ときどき晴れがちょうどいい時もある

中学、恋は盲目、合わす顔がない

中学3年、私とダイシは同じ高校を受験することになった。

受験前3ヶ月の教室の雰囲気は殺伐としていた。

クラスの皆んなが志望校に合格するために、今まで以上の勉強をしていた。

私は、牧野さんと一緒に勉強をしていた。

数学が苦手な牧野さん。

教えるのも苦戦していた。

 

ダイシは、志望校が決まってから変わった。

今まで勉強に力を入れてなかった。

それが、やる気になってきた。

何時間も1人で勉強するようになった。

分からないところは、積極的に同級生に質問するようになった。

早朝勉強では、クラスメイトのタケダくんがダイシにつきっきりで数学を教えてくれる。

クラスの皆んなが、あの時期は必死だったのを覚えている。

 

ダイシは、よく私に勉強成果報告をしてくるようになった。

嬉しそうに話すダイシが忘れられない。

こんなにも、がんばったんだと言うのだ。

私は、すごい進歩だよって返す。

これを毎日繰り返しながら勉強してきたダイシ。

モチベーションが日に日に高くなってきた。

これなら…第一志望の公立高校に行ける。

そう思った。

 

第二志望の私立高校を受験するけど、私は合格したとしても入学できない。

経済的理由で公立高校にしか行けない。

だから、ダイシにはがんばってもらい、第一志望の公立高校に合格してほしいのだ。

偏差値45を突破してほしい…

そう願っていた。

 

私立高校の受験日。

私の中学から受験する人は、私とダイシだけだった。

ダイシと最寄り駅で待ち合わせして一緒に行ったのを覚えている。

片道は2時間はかかる。

とにかく埼玉の田舎寄りに高校があり、駅から高校まで40分は歩く。

長い道のりだったのに、途中でダイシと何を話したのか覚えていない。

ただ、受験の話と高校の話…それから個展の話。

私のダークな絵を絶賛するダイシは、たまに個展の話をするのだ。

私が本当に個展を開くと思っていて、疑わない、無理だと決めつけない、真っさらな心で可能だというのだ。

疑わない、決めつけない、そして何よりも、おごらないダイシが好きだった。

おごらない…

また、ダイシは勉強や運動が出来ない方だったけど、ひがまない、妬まない、純粋に凄いと言って周りを褒めるところ…そんなところも好きだった。

心が明るく、無邪気で、いつも笑っていて太陽の子みたいだった。

 

私立高校入試結果。

中学で担任から知らされた。

私もダイシも合格だった。

ダイシが私に駆け寄り、笑顔でジャンプしてから私の両手をとった。

「すげさん、やったよ〜受かったよ〜」

子どものように、はしゃいでいたダイシ。

私は、まず、ほっとした。

あとは、本命の公立高校だ。

 

神様が、中学3年のクラス替えで、しかけをかけた。

同じクラスで隣同士になるしかけ。

今思えば…私への試練だったに違いない。

中学3年生の私がどう変わり、どう行動し、どう選択するのか…

それを神様は見たかったのかもしれない。

しかけのおかげで、私はだいぶ大人になった。

猫ばかり追いかけていた私が、1人の男の子を追いかけるようになったのだから。

 

神様の試練はさらに続くのだ。

公立高校試験結果。

私は、第一次試験で合格した。

ダイシは、不合格だった。

 

この結果に、私はどう行動に出るか…試練だと思った。

 

ダイシは明るい表情で言った。

「まだ、二次試験があるから、勉強つづけるよ」

 

クラスメイトのほとんどの人の高校が決まり、教室の雰囲気が変わったのを覚えてる。

殺伐としていた雰囲気からおだやかな雰囲気になる。

次から次へと、合格していく同級生。

歓声で教室が賑やかになる。

クラスメイトが喜び合う景色。

 

私は…その景色を見るたびに胸がしめつけられた。

景色の中に、たった一人で勉強を続けているダイシがいた。

皆んなや私の前では、笑顔に振舞っていたのに、机の上では険しい顔をしている。

ダイシは追い詰められていた。

公立高校試験、第二次試験が不合格だったからだ。

 

 

噂がとぶ。

「ダイシ、下の公立高校には受験しないらしい、また、同じ公立高校を受験するんだってさ。」

 

ダイシは最後のかけに出た。

第三次試験に再挑戦するのだ。

 

あんなに明るく笑顔だったダイシの姿はいない。

ずっとずっと険しい顔をして、机に向かっている。

それに、勉強成果報告をしてこなくなった。

ダイシと私の間、壁ができたみたいだ。

私は合格して、ダイシは不合格。

気まずくなる2人だ。

 

神様、私はどうすればいいのか分かりません。

せっかくの試練を無駄にしてしまいそうです。

 

卒業式の日。

この日にダイシの三次試験結果が出る。

卒業式の日まで、孤独だったダイシ。

クラスメイトは受験なんて忘れていた。

ダイシは諦めず、偏差値45の公立高校を受験した。

私は何もしてあげることはできなかった。

 

結果は…

 

卒業式の式なんて、どうでもよかった。

結果が気になって、気になって、仕方がない。

卒業式の歌を歌う。

一年を振り返った。

桜咲く春、同じクラスで隣同士になった思い出。

緊張しすぎて、間抜けなことばかりやっていた思い出。

思い出すと、涙がとまらない。

涙があふれる…

 

あぁぁ…わたしは、中学を卒業したくありません!

 

式から教室に戻った。

教室には担任がいた。

私は、担任に飛びついた。

「◯◯ダイシの結果は、どうでしたか?」

 

結果を聞いて、ダイシを探した。

教室中、探した。

いない、いない。

 

クラスメイトは…ダイシに気づかない。

クラスメイトは盛り上がっていた…

 

私は、廊下に出てダイシを探した。

どこにもいない。

あらゆる場所を思い出し、探し回った。

見つからなかった。

また、教室前の廊下に戻る。

 

すると、男子トイレから誰かのすすり泣きが聞こえた。

男子トイレに近づくと、

ダイシの声だった。

太陽みたいなダイシが泣いている…

初めて聞くダイシの泣き声。

私は、トイレ前にしゃがみ込み泣いた。

涙が止まらない。

涙で顔がぐしゃぐしゃになった。

ダイシ、ダイシ、ダイシ!

よく、がんばったよ。

ありがとう、ありがとう。

一緒に同じ高校に行きたかった。

誰に反対されようが、

私は君と一緒の高校に行きたかった。

君がいれば、高校なんて、どこでもよかったんだ!

 

ダイシは、公立高校の第三次試験に不合格だった。

 

 神様が与えた試練。

それは、大切な人と別れる心の痛みを知ること。

のりこえる力を得る。

 

 

卒業式の日、夕方からクラス全員で集まり、カラオケでさよならパーティーをする。

 

私は、このカラオケパーティーでダイシと会うのが最後だと思った。

制服ではなく私服で行く。

しょぼい服しか持っていない中、マシな服を着て参加する。

最後に会う日だと思い、私はカラオケパーティーを大事にしたいと思った。

 

カラオケパーティーは最寄り駅の近くでやる。

自転車でその場所へ行く。

カラオケには、クラスメイトがぎゅうぎゅう詰めになって入っていた。

「全員、そろったな!」

誰かが言う。

私はキョロキョロ見渡す。

ダイシは?

いない…

なんで…

 

呆然とした。

会えるのが最後かもしれないのに。

なんで、なんで、いないの?

 

「すげさん、すげさん、ちょっと来て。」

イワナガだ。

確か、イワナガはダイシと同じマンションに住んでいて、隣の隣に住んでいる。

 

イワナガが廊下に私を呼んだ。

私はイワナガについていく。

イワナガが言った。

「すげさん、ダイシさぁ、言ってたんだよ、公立高校不合格になってさぁ、合わす顔がない  って、だから今日来れなかったんじゃないかな。」

 

イワナガの言葉…忘れたことはない。

 

「ありがとう。」

イワナガにお礼を言った。

 

カラオケの部屋の椅子に座る。

考えていた…

合わす顔がない…

つまり、会いたくないと…

私だけ合格したから…

 

頭がぐちゃぐちゃになっていた。

でも、でも、どうしても最後に一度君に会いたい。

君は会いたくないと言っても、

私は、最後に一度君に会いたいんだ!

 

カラオケの音楽がけたたましく鳴る。

 

私は、立ち上がった。

学級委員の小林さんに言った。

「気分が悪いから先に帰ります。」

カラオケ室から出て、外に出た。

あっ…

雨がざざぶりに降っていた。

雨かぁ、ちょうどいい。

濡れて帰りたい気分だから。

私は自転車に乗ってペダルをこいだ。

松尾芭蕉ゆかりの道、松並木。

松並木の道のりを自転車で走行する。

ここはなぜか記憶に鮮明に覚えてる。

風景や心情など、細かく覚えてる。

松並木の道が強い雨で打ち付けるんだ。

きれいだったんだ。

強い雨にうたれる松並木の道が。

傘を持たず…ずぶ濡れだった。

3月は、まだ寒い。

薄着だった。

雨の中、自転車で走るのも気持ちいいかな。

松並木の道…毎回訪れるたびに、あの時のことを思い出す。

君に会いたかったと…伝えたかったんだ。

私は、大きな声を出して泣いた。

声は激しい雨音で、打ち消される。

たくさんの涙は、雨で流してくれる。

泣きながら、向かう、向かう。

 

ダイシのマンション前にきた。

自転車から下りて、マンションを見つめた。

ダイシは、家ですか?

ダイシは、外ですか?

 

私は、最後の望みをかけて、ダイシに会えるかもしれないと思って、マンション前で待つ。

雨にうたれながら、ダイシを待つ。

ダイシは私に会いたくないと思うけど、私は最後に君に会いたいんだ。

お礼を言いたいだけなんだ。

腕時計を見る。

19時だ。

門限を過ぎちゃった…門限は、いいや。

今日だけは許してね、父さん。

 

何時間いただろうか…

覚えていない。

ダイシの家の番号は知っていた。

ダイシの家電の番号も暗記していた。

ピンポン押せば…簡単に会えるのに。

15歳の私には、それができなかった。

勇気がなかった。

男の子を意識した自分が受け入れられなかった。

度胸のない自分…

神様、これも試練だったんですね?

まだ、まだ、自分から行けません…

私は、奥手だった。

 

 

ずぶ濡れになって帰ってきたのが23時頃だった。

君に最後に会いたかった。

どうしても。