いつも空は、曇りときどき晴れ

自分史、人生曇り空ばかりだけど、ときどき晴れがちょうどいい時もある

中学、恋は盲目、同じ土俵に立ちたいんだ!

中学3年の夏、進路相談が始まる時期。

私は、ダイシの進路をすごく気にしていた。

 

埼玉から東京にアクセスしやすいため、高校は数え切れないほどあって、生徒の進路はバラバラになることは間違いなしだった。

 

ダイシはどこの高校を受験するんだろう…

気になっていた。

 

公立中学全国テストが、中学3年にもなると増える。

全国テストの偏差値を指標にして高校選択、受験するからだ。

 

担任と進路相談。

担任がニコニコして言った。

「すげさんは、この成績なら浦一高をねらえる、あともう一踏ん張りがんばればいいね。」

 

私は、この時、何も答えられなかったのを覚えている。

先生、何言ってるんですか…

行けるわけないですよ…

そう思った。

 

教室に戻ると、男子らが話しているのを小耳にはさむ。

「ダイシ、ぜんぜん勉強できないようだぜ、偏差値40いってないんじゃないかな…」

 

偏差値40?

 

分かってはいた。

ダイシは勉強が苦手で成績が悪かったことを以前から知っていた。

でも、まさか、こんなに成績が悪いとは思ってはいなかったのだ。

だから、さすがに、驚いたんだ。

 

偏差値40で…どこの高校を狙えるのだろう。

 

ぼっーとする。

偏差値40かぁ…

どんな高校なんだろう…

 

廊下からゆり子ちゃんが私を呼んだ。

廊下に出てみると、秀才メンバーが集まっていた。

 

まず、私に中学1年から勉強のやり方を教えてくれた寺坂くん。

そして、寺坂くんの親友、保科くんも私に勉強を教えてくれた人。

ゆり子ちゃんは、ずっと学級委員をしてきた優秀な子で、私と一緒に勉強してきた。

おまけに、生徒会長のフジセくんがいた。

フジセくん、公立は浦高、私立は東京難関校を受けるという。

全員、浦高を目指すメンバーだった。

 

「教え方が良かったんだな〜さすがだな俺。」

寺坂くんが笑っていう。

「寺坂くんには感謝しているよ、寺坂くんがいなかったら、私はつまづいていたよ…」

私が寺坂くんにお礼を言った。

 

「明日から、浦高対策クラスが放課後に設けられるから、じゅんかちゃんも来てね。」

ゆり子ちゃんが私を誘う。

 

「いや、浦高は行けないな…厳しい…」

 

「大丈夫だよ、まだ夏だから、目指せるよ。」

寺坂くんがいう。

 

同じ高校を目指すメンバーが集まって一緒に勉強するのだ。

 

「ありがとう…」

 

ゆり子ちゃん達が私から去っていく。

明日から浦高対策授業…

 

無理だよ。

ゆり子ちゃん達と私とは全然違う。

地頭が違う。

まったく。

ゆり子ちゃん達は、本当の実力派。

私は、ねばって、ねばって、

なんとか、なんとか……ひっついただけなんだよ。

全然違う。

 

 

私はまゆみちゃんと一緒に学校の図書館へ行く。

まゆみちゃんは調べものをしていて、私は高校学校案内の偏差値表を開いて見ていた。

 

偏差値40ラインの高校を見ていた。

上位校に比べ、40ラインはたくさんある。

埼玉と東京を合わせたら、数え切れないほどあった。

たくさんたくさんありすぎて…嫌気がさしたのを覚えている。

これじゃあ、ダイシが行きそうな高校が分からない。

皆目検討もつかない。

1人なげいていた。

 

そんな私の様子を見たまゆみちゃんの目つきが変わる。

 

「じゅんかちゃん、また、バカなことを考えていないでしょうね?」

 

…………

 

「何で、偏差値40ライン上を見てるの?」

 

まゆみちゃんは、3歳からずっと一緒に育ってきた。

私をよく深く知っている友人。

 

「なんか、疲れたから、こっちの高校もいいかなぁって…」

 

まゆみちゃんが、かなり驚いていたのを覚えている。

 

「じゅんかちゃん、中学1年の途中から、がんばってきたじゃない!何で今さら?」

 

まゆみちゃんがいつもより声を荒げて話す。

まゆみちゃん、また心配かけちゃったね…

 

私は、中学1年の途中から、浦井先生の影響で勉強に目覚めた。

勉強は大嫌いだったけど、

はじめは浦井先生に喜んでほしくて、

浦井先生に褒めてもらいたくて、

必死に勉強を始めた。

寺坂くんや保科くん、ゆり子ちゃんに勉強を教わってきた。

勉強は自分のために…

そんな感覚で勉強を続けてきた。

 

思い返すと、

中学1年第1回目の公立中学全国テスト、

私の平均偏差値は40台だった。

勉強ができないんだと思った。

でも、

浦井先生や同級生の力を借りながら、

私はひたすら勉強をしたのを覚えている。

「猫の道」の探索を卒業してから、

試験前はもちろん、機会があれば徹夜して勉強するようになった。

父親が心配して夜、家のブレーカーを落とした。

私が夜に勉強しないように…

私の体を心配していた。

私は、それでも、隠し持っていた懐中電灯を照らし、暗闇の中で勉強していた。

何かにとりつかれるように、勉強をしてた。

 

徹夜明けの朝、必ず会うのがまゆみちゃんだった。

まゆみちゃんは、私がどれほど勉強をしてきたかを一番よく知っている友人だった。

 

中学3年の夏、

まぐれで平均偏差値60後半を出した。

担任の先生が褒めてくれたのを覚えている。

担任の先生のテンションが高く、浦一高を目指せと言ってきたのだ。

先生、まぐれです…

 

まゆみちゃんが怒った口調で言ってた。

「じゅんかちゃんが、どれだけ勉強してきたか知ってる…無駄にしないでね。」

 

 

帰りの会が終わった後、担任の先生に言われた。

「すげさん、昨日何で浦高対策授業に出なかった?今日はちゃんと授業を受けなさい。」

 

「………」

 

 

担任の先生をはじめ、秀才メンバー、まゆみちゃんまで、皆んなが皆んな、浦一高を目指せという。

私は、浦一高に行きたいという気持ちが湧かなかった。

浦一高は、埼玉最難関高でぴんとこなかった。

なぜなら、無理だと思ったから。

地頭のない私には、ゆり子ちゃんらの足元に及ばない。

そして、私の中には、違う目指したいところがある。

 

私は、教室を見渡す。

窓側の最前列にいるダイシを見る。

ダイシに近づく。

ダイシはテスト答案用紙に向かって頭を抱えていた。

私はダイシの隣に立つ。

ダイシの答案用紙をじっくり見た。

数学の答案用紙、点数は…18点。

得点箇所は、最初の問題の基礎問題をかろうじてとっている。

あとの問題は…ほとんど全滅に等しい…

ダイシは基礎問題で頭を抱えて手こずっていた。

 

誰か…クラスの男子、数学をダイシに教えてくれないかな…

 

私が、声をかけたくても、なかなかかけられない。

 

苦戦するダイシ。

頭を抱えて問題を解く姿を見る。

私は、どうしたいのだろう…

私は、何がしたいのだろう…

寺坂メンバーに入るべきか、入らないべきか…

 

 

中学3年の夏休み明け。

また、公立中学全国テストがあった。

私は、この時にすでに決めていた。

自分の進路を決め、覚悟をしていたのだ。

進路?

そんなものは、ない。

進路を決めるのでない。

 

ようい……はじめ!!

試験開始の合図がする。

いたって冷静な自分。

ゆっくり基礎問題を解いて、解答欄に記入する。

………………

 

やめぇ!!

 

回答用紙が回収された。

終わった、終わった。

これを繰り返せばいい。

 

 

私は、全科目の回答用紙には、基礎問題の解答しか記入しなかった。

 

これでいい。

まっさらで……いい。

 

 

私は、決めたんだ。

ダイシと同じ土俵に立つと決めたんだ。

ダイシが平均偏差値40台なら、

私も平均偏差値40台だ。

 

ダイシと同じ土俵に立ちたいんだ!

ダイシと同じ景色をみたいんだ!

ダイシと同じ空気を吸いたいんだ!

ダイシと同じ感覚を味わいたいんだ!

ダイシと同じ喜びを感じて一緒に泣きたいんだ!

ダイシと同じ高校に行きたいんだ!

 

恋の盲目…私には、それがすべてで、それが希望だった。

 

アナウンスで流れる

「3年4組のスゲノジュンカさん、至急、校長室に来なさい、3年4組のスゲノジュンカさん!至急、校長室に来なさい!」

 

覚悟は…している。

私の進路は、絶対譲れない。

15歳の時、私は真剣勝負をする。

私が決めたことだから、譲れない。

どんな大人に注意されようが、私は変わらない。

 

私は、たった一つの進路だけだ。

ダイシと同じ土俵に立つことだ。

君と一緒にいたいから…一緒にいたいから…

どんな大人を敵に相手にしても、

私は、絶対譲らないんだ!