いつも空は、曇りときどき晴れ

自分史、人生曇り空ばかりだけど、ときどき晴れがちょうどいい時もある

中学、恋は盲目 走りぬけろ!

私の初恋は、中学2年の時に訪れた。

それまで、まったく男子を意識したことがなく、村上さんと一緒にバカなことをしていたし、小学生並みに無邪気に遊んでた。

髪がボサボサで邪魔なものだと思っていたし、制服の着方も乱雑で汚れていてもどうでもよかった。

周りの女子は、身だしなみに執念に気をつかう。

トイレの鏡は大盛況。

身だしなみグッズを持参して、休み時間に髪を整え直す。

隙間時間があれば唇にリップを塗る。

さらに、ティーンズという中学生向けの雑誌を買っていて、教室で女子が群がり雑誌について話をしていた。

見ていて、女の子らしいなぁと思っていた。

恋を知らない私は、まったく無関心だった。

興味は、ひたすら猫の道。

恥ずかしくて村上さんにしか言えない。

でも、猫の道探しを最近卒業した。

野良猫反対勢力の住民が多数で、村上さんと私はなす術もなく撤退したのだ。

小学生みたいなことばかりしていた。

2人で次にはまったのは、日本文学書だった。

読書家の村上さんに影響を受けた。

本を読むようになった。

やっと、まともな中学生らしいことをするようになったかな……

でも、子供じみた発想は変わらなかった。

中身は小学生並みだ。

 

そんな私が、一瞬で恋に落ちた。

あの衝撃は忘れられない。

 

朝、兄とよくケンカをするようになった。

「兄ちゃん!まだぁ〜次わたしだよ!」

洗面・鏡の取り合いだ。

「何だ、じゅんか、今まで鏡使わなかっただろ、急に何だよ…」

 

兄よりも先に起きて鏡と洗面を先取りした。

兄も負けずさらに早く起床して、鏡と洗面を先取りする。

兄と私がこんなことで競争するようになるとは…

だって、兄ちゃんの洗面時間は長いんだもん!

ニキビ対策やら髭剃りやら髪を固めるやら…

待ってられない。

といいつ、人のこと言えない。

慣れない手つきで髪を束ねる。

あれ?

もう一度やり直し。

ん〜うまくいかない。

難しいな、三つ編みってどう結わくの?

わからん。

あっ〜めんどくさい、おさげでいいや。

 

私が鏡の前に立つようになったのだ。

 

私の変化に早く気づいたのは、もちろん兄だ。

ニヤニヤして私の脇をツンツンする兄。

「おおお…じゅんか、さては、お前にもようやく春が来たのかぁ〜」

 

私は、兄に茶化されて急に恥ずかしくなった。

そ、そんなことない!

思いっきり否定して、おさげの頭をぐしゃぐしゃにする。

行ってきます!

突っ走って学校へ行く。

 

学校の正門に入る前、立ち止まり確認する。

制服が乱れていないかどうか…

髪の毛も触り確認する。

深呼吸してから正門に入る。

 

何かが変わった…意識するものが一変してしまったのだ。

 

休み時間、トイレの鏡を気にする。

たくさんの女子で見ることは無理だ。

なるほど…なぜ女子が鏡の前に群がるのか、分かったような気がする。

 

ある昼休みの時間、氏家さんがティーンズ雑誌を持ってきた。

まったく興味がなかったのに、雑誌にチラチラ目をやる。

何が書いてあるんだろう…

気になった。

氏家さんは雑誌を広げて読んでいる。

雑誌をのぞくと、モデルが髪を束ねる写真だった。

「氏家さん、髪を束ねる方法が書いてあるの?」

氏家さんは、すごく嬉しそうな顔をする。

「じゅんかちゃん!ついに興味をもてるようになったのね!うぁ〜。」

大げさだな…

「じゅんかちゃんにも、春が来たのかしら…」

私は慌てて全否定する。

「そんなわけないよ、まったく違うから!」

つい、ムキになってしまった。

「まぁまぁ、まずはね、髪の毛の洗い方から、それから髪の毛のとかしかたから教えるね♪」

なんだか、氏家さん、嬉しそう…

氏家さんの説明を聞いて、

正直、めんどくさいと思ってしまった。

なぜなら時間のかかることばかり、やらなくてはいけないからだ。

 

私は、いいや…そこまでして。

髪の毛は、おさげで3年間過ごすことになる。

一番簡単で、一番邪魔にならないからだった。

 

身だしなみには気をつけるようになった中学2年。

といっても、制服を整えることと、おさげ髪が乱れていないか確認することだけだった。

 

しかし、身だしなみだけを気にするだけではいかなくなってしまった。

私の目の前にライバル出現したからだ。

まさに、おバカな自分。

こんな経験をするとは思わなかったな。

私は、どんどん恋の深みにはまっていくことになる。

同じクラスに、めいちゃんという可愛い子がいた。

学年一可愛くて男子にものすごく人気があった。

授業中、男子が手を上げて勢いよく立つ。

その男子がクラスメイトの前でめいちゃんに告白する。

大騒ぎになった。

それくらい、めいちゃんは可愛らしい子だった。

私も、愛嬌のあるめいちゃんに好感を持っていた。

めいちゃんと、その親友のくにちゃん、そして私の3人は比較的関わりがあって仲が良かった。

2人は何度か私の家に遊びにきたし、3人で図書館や公園に行ったこともある。

昼休みの時間に3人で行動することが多かった。

 

そんな、昼休みの時間。

いつものようにめいちゃんらと行動すると、めいちゃんは隣のクラスの男子生徒を見ている。

ん…

くにちゃんがヒソヒソ話で私に言う。

「めいちゃんの好きな人だって…内緒だよ。」

 

めいちゃんが見ていた男子の顔を確認する。

あ……

めいちゃんは、私らに言う。

「内緒だよ、ダイシが好きなんだよね、いいよね。」

 

何も言えない時間が過ぎる。

 

くにちゃんがさらに言う。

「じゅんかちゃんさ、そういえば、最近女の子らしくなったよね、好きな人できたんでしょ?誰だれ?教えて〜」

 

焦る、焦る。

めいちゃんがすごい好奇心で聞いてくる。

どうしよう、どうしよう。

「いないよ。」

 

くにちゃんとめいちゃんは、まったく信じない。

しつこいほど、これでもかって言うくらい、諦めない。

 

「めいちゃんと私の好きな人を教えたのに、言い逃れするのは、ズルイよ。」

 

背中から汗が滴り落ちるのを感じたのを覚えている。

あっ、あ、、ダイシがうちらの方を見て近づいてくる。

大変だ!

何とかしなきゃ、何とかしなきゃ。

心臓の鼓動がはやくなる。

「あ、あ、あのね、あの人だよ!」

 

私はダイシがいる場所の反対方面に適当に指を指した。

適当に。

なんだか、分からなかった。

とっさに出た言動だった。

 

「キャー!そうなんだぁ!じゅんかちゃん、フジセが好きなんだね〜やっぱりね、頭いいしね、生徒会長候補だもん!」

 

えっ……フジセ、生徒会長候補。

めいちゃんとくにちゃんが大きな声で、フジセの名前を何度も何度も叫ぶ。

これじゃあ、まるで私がフジセが好きだと言いふらしているみたいじゃないか……

 

あっ、しかも、ダイシに聞かれた!

違うのにな、違うのにな。

聞かれてしまった。

肩を落とした。

否定するのがめんどくさくて、どうにでもなれって感じだった。

 

私は、こっくりうなずいた。

堪忍して、その場から逃げたかった。

でも、絶対言葉にして口に出さなかった。

心にもないことを言うのが嫌だったからだ。

 

 

あれは、かなり凹んだのを覚えている。

はぁ〜

何だろうか、何なんだろう、この気持ちは…

クラスの男子が言ってくる。

「スゲさんって、フジセが好きなの?」

興味本位で質問してくる。

めいちゃんらがいるから否定もできず…

こっくりうなずく。

もう、当時はどうしていいのか分からなかったんだよなぁ。

 

それから、めいちゃんらと一緒に隣のクラスに行くようになった。

私は隣のクラスの村上さんに近づくようにした。

めいちゃんらは、隣のクラスに行く時、必ず私を連れて行くのだ。

めいちゃんらとの会話が辛くなる一方だ。

なぜなら、ダイシの話ばかりだからだ。

逃げたかった。

めいちゃんには悪いけど、そっとしておいてくれないかなぁと思っていた。

この心の鈍痛は、失恋というものだな…

初めて感じる。

非常に辛い。

 

 

それから、めいちゃんと自分を比較してしまう愚か者。

何もかも魅力を兼ね備えているめいちゃん。

ここは潔く身をひこうではないか。

だけど、気持ちは大事にしていくから…

気持ちだけは譲れないな。

 

 

学年中、噂が広がった。

スゲノが超秀才のフジセに片想いだと…

 

否定もできず、いろいろな人に質問され、うなずく。

質問されるたびに辛くなる。

あぁぁ…疲れたな。

 

 

6月頃、秋の運動会に向けて騎馬戦がある。

騎馬戦の組を決めていた時だ。

私とめいちゃんは同じくらいの身長で、同じ組みだった。

私が上になる人だった。

めいちゃんを含め他の女子が私を持ち上げようとする。

そんな時、

「いたたた…ごめんね、一回下ろしてもいい?」

めいちゃんだった。

めいちゃんが腕を痛めたらしい。

私は申し訳がない気持ちでいっぱいだった。

周りの女子が言う。

「スゲさんより、めいちゃんの方が軽いしよく動けるから、2人交代しない?」

 

結局、私が下になり、めいちゃんを上に乗せた。

すごく軽かった。

めいちゃんは華奢な体型で女の子らしい。

足が細く軽々持ち上げられる。

何から何まで可愛らしい人だなぁ。

私は同じ身長なのに、重いようだ。

 

 

帰宅後、体重計にのる。

う〜ん、、46kgかぁ。

兄が後ろからチャチャを入れる。

「最近のじゅんか、変だぞ〜体重計なんてのらないのになぁ〜まぁ、お前は母さんに似てデブになるな、あははは〜」

 

デブ?

私は体ががっしりしてて、ちっとも女の子らしくない。

「兄ちゃん、女の子らしいって、どういうこと?」

真剣に質問する。

「じゅんかじゃなぁ〜小動物って感じだしなぁ 笑

それに、お前のもも、太すぎるんじゃね?」

 

えっ!

足が太すぎるのか。

女の子らしくないと?

騎馬戦で持ち上げためいちゃんの足を思い出す。

確かに、太すぎる。

そうかぁ、やはり、めいちゃんはすごいや。

男子らが騒ぐわけだなぁ。

可愛くていいなぁ〜。

はぁ、、失恋の感情、いつ消えるんだろう…

鈍痛がなかなか取れないんだよ。

 

 

私は、この胸の鈍痛と足太コンプレックスを解消しようと考えていた。

 

中学2年の夏。

夏休みから冬のマラソン大会に向けて走ってみよう。

運動神経の悪い人でも、継続していけばできるようになるって、浦井先生が言っていた。

雑念を払うためにも走ろう。

私はハンカチに写真を包んだ。

それを体操着の胸のポケットに入れた。

以前、行事写真の販売で、ダイシが写っている写真をちゃっかり買ったものだ。

大事に大事にしていた。

写真を胸に入れることで、

自分の意思をかためるのだ。

辛くても辛くても、めげないように……

朝4時起床。

小学校のグラウンドまで自転車で行く。

運動は苦手だし好きじゃない。

それでも、やるんだ。

グラウンドを走る。

最初は数周しか走り続けることができなかった。

とにかく、続けること、続けること。

毎日、朝マラソンをすると、呼吸が楽になってきた。

朝の4時半から7時まで走り続けた。

グラウンドで何度も寝転がり、息を整えていた。

時々、ポケットに入れてある写真を取り出す。

ダイシを見て意思を再度かためる。

やめたくなりそうになった時、

辛くなった時、

さぼりたくなった時、

写真を取り出してダイシを見る。

歯をくいしばる。

続けること、続けること。

7月中旬から12月まで続ける。

 

体重計は46から42kgにいつの間にか減っていた。

足は太いまま 笑

まぁ、いいや。

なんか、それよりも、自分が走り続けてきた事実の方が嬉しいんだ。

走っているうちに、胸の鈍痛が消えてきた。

雑念を払うことができたようだ。

よかった…

 

冬のマラソン大会。

去年は140番台だった。

スタート地点から私の前にめいちゃんがいた。

めいちゃん、負けないよ!

がんばってきた力をここで出しきるよ。

ようい…パン!!

 

ゆっくり自分のペースで走る。

前にはずっと、めいちゃんが走っていた。

私はめいちゃんの傍を通り、

思いっきって走り抜けた。

走りぬけよう。

走りぬけて、飛び出すんだ。

嫌な気分や雑念も振り払って、

前へ前へ走るんだ。

 

最後まで走り続けた。

雑念を払って。

ゴールに向かって。

 

ゴール!

7位だ!

やったぁ、予想外に速かったぁ。

やったぁ、やったぁ、やったぁ!

あの時の喜びは一生忘れられないものとなった。

 

誰もいないところで、私はポケットから写真を取り出す。

「やったぞ、ダイシ、ダイシ、支えになってくれて、ありがとう、おかげで頑張れた。」

 

中学の同級生らは、ずっとずっと私が生徒会長のフジセが好きだと思っている。

私がダイシを好きだったという話は誰も知らない。

親友のまゆみちゃんや村上さんですら、知らない。

私だけの秘密だ。

ずっと。