いつも空は、曇りときどき晴れ

自分史、人生曇り空ばかりだけど、ときどき晴れがちょうどいい時もある

人には金より時間を奉仕する父親

私の父は、昔も今も靴職人のままです。
団塊世代父親は中学を卒業して職人の道を行きました。
時代の流れが変わり、日本の靴職人は昔に比べ少なくなったように思えます。
賃金が安くてすむ外国人をつかう企業が増えたからです。
父親が働く賃金も下がる一方でした。

小学生の頃、よく父親の仕事をかなり手伝いました。
私はまだ未熟なので、飾りをよく担当しました。
革靴の飾りを1つ手作業で仕上げるのに15分かかります。
その飾りを200個作っていました。
何十時間もかけて手作りの婦人靴ができあがります。
私の肩がガチガチになり、腰とお尻が痛んだ。
こんな苦労をしても賃金はたかがしれている。
父親と母親の稼ぐ大変さを自分の体に刻んだ小学生。
朝7時~深夜2時~3時。
家族全員で靴を作ることもしばしばありました。

 

私が中学の頃、父親に抗議をします。
「母親が八百屋のパートに出た方が時給400円多く稼げるよ!」
今思えば、父親に何という言葉を刺したのかと後悔しました。
父は、笑ってこう言いました。
「おらぁ、この仕事がいい。」
母親までも同じことを言います。
私は納得がいかず両親に抗議をします。
「だって、深夜まで休まず働いて、給料安いじゃん! 肩がガチガチになるし辛いし、楽な仕事にしなよ!」

両親に反抗する私。

両親は私の言葉を聞くたびに笑います。
そして、いつもの言葉をつかう。
聞き飽きるほど。

父親の口癖。
「貧乏暇なし」

笑っていつも同じことを言う。

私の意見は何処かへ行ってしまった。
両親の負担を少しでも軽くしたくて言ったのに。
両親は聞く耳もたなかった。

父親の背中を毎日見ながら育った。
白いぼろぼろの下着。
汗でびっしょりだ。
ねじり鉢巻をしてミシンをはしらせる。
父親のいつものスタイルだ。

大したお金にならない労力をなぜ続けるの?

その答えは探したらあった。
父親の生活スタイルにありました。
父は、お金のさじ加減より、やりたいことを選ぶ人だということがわかりました。
金銭的に損をしても、やりたいことをやる。
父さん流儀だった。
職人魂ともいえる。
だから、父親の生活スタイルを観察したら、自然と父親という人間が理解できるようになってきた。

父親は頑固で意地っ張りで厳しい。
シャイでぶっきらぼう。
でも、根は優しい人だ。

父は、日曜大工が好きで得意だ。
機械も分解して修理してしまう。
だから、近所の依頼は多い。
無償で父親は何時間もかけて機械を直したり、
プチリフォームをする。
水道管がつまれば、誰よりも素早くかけつける。
水道管を開けて何時間でもかけて直してしまう。
雨漏りがあれば容赦なく直しにいく。
近所の排水溝が詰まってれば、体中泥まみれになって1人掃除、泥と汗まみれになりながら、
ご近所にご挨拶ご挨拶。
通る近所さんも父親を見て親しみのある顔で話しかける。
近所の家のネズミやヘビ、ゴキブリ退治をしに駆除用具持参(あらかじめ準備してある)して、かけつける。
近所の公園に子供たちが散らかしたクズを拾い集め、ついでに公園掃除までする。
自宅開放!
「誰でも来いよな!」
実家はいつも開放されている。
子供からお年寄りまで我が家に遊びにくる。
もちろん、父親は仕事をしながら話をする。
10人、15人、20人の子供らが年齢関係なく集まって遊ぶ。
遊び場の提供をしていた。
毎週ボランティアで新聞収集して、障害者施設に寄付(車椅子)をまだ今でもしている。

近所の人は、とても父親を頼りにしている。
近所の子供から父親は慕われている。

だから、私が実家に帰ると大勢の近所の方が挨拶してくれる。

「じゅんかちゃん!今帰ったの~また大人っぽくなったね~。」

皆んなは笑顔で私を迎えてくれる。
これも父親のおかげだ。

無償で他人に自分の時間を与える父親
生活苦なくせに、他人のために時間を与える。
お金は与えられないけど、時間なら与えられる。

私は、そんな父親がすごく誇らしいと思った。

そんな父親は、はたから見たら損をしているように見えるかもしれない。
バカな人だと思う人がいるかもしれない。
「父さん、損ばかりしてる。」
私がそう言うたびに父親は、

「貧乏暇なし」

って言う。

父さん、損ばかりしてるよね。
何度も言っていた。
でも、私が歳を重ねるたび、
父親の生きかたがだんだん輝いて見えるようになったんだ。
父親の生きざまって、案外すごいかもって。
大して稼ぎはない。
でも、イキイキと靴を作っている。
それに、近所さんの信頼度は高く、皆んながお父さんを気にかけてくれるよね。
今の私なら『損』という言葉は使わない。
無償で父親がやってきたこと。
賃金の安い靴職人を続けてきたこと。
これは、損じゃなく、父親がやりたかったことなんだ。
だから、父親は幸せを感じているだろう。
お金より時間が貴重だったりする。
父親はそんな貴重な時間を人のために分けたのだ。
時間が金より勝る。
最近、そう思う。

貧乏暇なし

いいじゃないか!
そんな生きざまも楽しいじゃないか。